ターゲットとなりうるインパクトの認識
まず最初のステップとして、対象とするアクティビティや事業などがどういった領域に該当するかを定めます。多くの企業では各事業やアクティビティに紐づくSDGsなどを対外的に表示するなどしていることからも、自社の取組がどういったインパクト領域に紐づくのかはある程度意識されているといえますが、インパクトを詳細に定義していくうえでまず手始めにターゲットとなるインパクト領域を設定しましょう。
IMPACTLAKEでは、国内・海外に存在する社会課題をカバーするかたちで、「社会」・「環境」・「経済」ごとにインパクト領域を定義していますので、そちらもご参考ください。
インパクトの定義の確認
次に、上記で定めた各領域それぞれが、具体的にどういったインパクトを指しているのか、複数のインパクトを念頭に置く場合、それぞれの境界線や認識ポイントはどこにあるのかを確認します。例えば、以下のようなポイントを明確化する必要があります。
- 「介護」は「医療・ヘルスケア」などに含めるあるいは類似の概念として扱うか、「アンペイド・ワーク(家事・育児など)」に含めるか、または課題の置きどころにより(社会保障の課題としてとらえるか、個人のエンパワメントの課題としてとらえるか)により分けるか
- 「エネルギー」に関する課題は「環境」に関連した一概念としてとらえるか、あるいは「都市計画・まちづくり」の一要素としてとらえるか、等
検討にあたっては、必ずしも正解があるわけではありませんが、評価対象とするアクティビティや事業などが上記で定めた領域においてどういったインパクトをもたらすかも十分に考慮する必要があります。また、このタイミングである程度意識すべきは以下のようなポイントです。
- 統一されたインパクトモデルを1つ作成した際に、明らかなトレードオフが存在しないか
- 同インパクトモデルの中で想定されうるKPIが収斂しそうかどうか
インパクトの詳細化・ブレイクダウン
ある程度インパクトの定義が定まったところで、インパクトのブレイクダウンを行っていきます。このフェーズでは、ルートとなる(大目標として設定した)インパクトに対して関連するインパクト(或いはアウトカム等)を構造的に細分化し、どこまでを解決すべき/できる課題ととらえるかなど、全体感を理解・整理します。
その際、重要なポイントとして、より細分化された網羅的課題整理を入口で行うことにより、後段のインパクトKPIの検討・設計における変数の抜け漏れを防ぎ、より重要/より適切なKPIにフォーカスすることが可能となります。また、同時に、自社や関係者の閉じた理解を基にしたボトムアップな視点のみでKPIを検討し、的外れとなってしまうリスクを低減します。
またimpactlakeのスタンダードプランでは、各領域ごとに標準的なロジックモデルを定義しており、特定の事業やアクティビティがどういったインパクトを創出しうるかを網羅的に探索することが可能です。
バウンダリの基本的な考え方・前提
創出すべき/創出可能性のあるインパクトが定まったところで、評価対象の事業やアクティビティが本当に貢献可能か、加えて評価可能かを総合的な角度から判断します。具体的には、以下のような観点で判断をします。(括弧は判断材料となる指標など)
また、本項目に関しては、国内においては2023年に金融庁主催の検討会にて一定の方向性が示されております。(参考:インパクト投資等に関する検討会)
追加性
仮にその事業やアクティビティがなかったとした場合、同様の成果を生み出せた可能性が大きく下がってしまうような、インパクト創出において貢献度の高い要素であるか
(e.g. 想定効果が大きい、課題解決のボトルネックとなる要素であるか、等)
継続性・持続可能性
その事業やアクティビティが一過性のものではなく、ある一定以上の期間継続されるような性質のものであり、結果として創出されるインパクトもある程度継続性を有するか
(e.g. 継続事業年数が一定以上、耐用年数が一定以上など)
主体性
その事業やアクティビティを行う主体、或いはリソース投下などのインプットを行う主体が、その事業やアクティビティの結果としてもたらされるインパクトを意識して活動しているか
(e.g. インテンショナリティ、事業セグメントにおける比率、戦略との関係性、等)
独自性・優位性
部分的に「追加性」の論点に包含されるケースもあるが、その事業やアクティビティが、他の活動主体のそれと比較してインパクト創出において何らかの独自性・優位性を持っているかどうか
(e.g. 特定業界で一定のシェアがある、インパクト創出効率が他と比較して明らかに高い、等)
バウンダリ設定の軸
アクティビティそのもののインパクトをどう認識するかについては前段で述べた通りですが、アクティビティがもたらす波及効果をどの程度まで認識するかは大きな論点となります。当社では「時間」「ステークホルダー」「事象・効果」の3つの観点に留意してバウンダリを設定することを推奨しています。
時間軸の観点
- インパクトに資する活動がいつ行われるか
- インパクトがいつ実現するか
- どれくらいの期間にわたって創出されるか
ステークホルダー軸の観点
- 顧客などに対する直接的な貢献・インパクト(1st touch)
- 更にその先にいる重要なステークホルダーへの間接的・波及的な貢献(2nd+ touch)
事象・効果の観点
- ターゲットとするインパクトまでの事象としての距離感
- 他の要素と比較した影響の度合い
実務におけるバウンダリ設定
上記の観点を考慮しつつも、企業の全ての取組を俎上に載せての評価は様々な理由(データアベイラビリティやオペレーションのリソース不足等)でインパクトマネジメントの初期段階では困難なケースが大半であると想定されます。したがって、実務的な観点においては、以下のようにいくつか階層を設けてバウンダリ設定することがあります。
- 企業の幅広い取組を定性的に示しつつ(ロジックモデルなど)、定量的な観点での評価は部分的なものにする
- 対外的に公表するものについては部分的なものとしつつ、社内では目標設定やKPI管理の視点で詳細なKPIを管理する
- 実績を中心に定量評価しつつ、明示的な情報やデータが存在しない将来の創出計画に関しては割愛する、等
impactlake™ 関連機能
インパクトモデル構築機能
impactlake™では、上記のような観点で定義された想定インパクトごとにインパクトマネジメントを実施することが可能です。
機能詳細
- 対象となるカテゴリー、地域、インテンション(創出インパクトの方向性)等、impactlakeが区分する5つのステップに回答
- 回答内容を基に、インパクトモデル(ロジックモデル)のベース案が作成される(Impact~Output)
- インパクトモデル(ロジックモデル)は、約50の汎用的な想定インパクトの中から選定され、カスタマイズ可能
機能活用の例
- 対象となる事業・取組・投資先の最終的なインパクトについて探索し、網羅的なインパクト創出経路を導出する
- 対象となる事業・取組・投資先の創出可能性のある複数のインパクトを管理のために適切に分解する
- 対象となる事業・取組・投資先が創出しうるインパクトについての新たな視点や洞察を得る
(その他、本機能に関する不明点等ございましたらサポートまでお問い合わせください。)