Step4:インパクトKPI設定

KPIの基本的な考え方

インパクトモデルが出来上がり、個々の要素間の関係性や、具体的なインパクト創出経路がある程度明確になったタイミングで、その進捗や創出したインパクトの大きさを定量的に図っていくためのKPIの設定を行います。KPI設定では、具体的なアクションKPI、および最終的なKGIの設定は比較的容易である一方、中間KPIの設定がストーリー設定上非常に重要となります。

実績管理・開示のためのKPI設定

取組の結果として、実際にどの程度具体的な成果(インパクト)が創出されたかを把握したり、当該数値を対外的に開示していくようなケースにおいては、より想定している成果(インパクト)に近い指標を選定するケースが多い傾向にあります。
特に、公的なデータが存在するものについては自社の貢献が明確化可能であるため、(仮に自社取組があった場合とそうでない場合が比較可能)必然的に成果(インパクト)に近い指標を実績ベースでトップダウンに測定することが可能です。

他方で、創出される効果が時間軸の長いものとなる場合、実務的な観点では前年度との差分や具体的な進捗状況を示す必要性も一定程度あることから、年次ベースのKPIとしてAction KPIやProcess KPIが重要になります。

目標設定・計画のためのKPI設定

今後の取組による成果(インパクト)創出の目標値や計画値を決めていくケースにおいては、アクションよりKPIをベースにボトムアップにインパクトを推計していくケースが多い傾向にあります。
これは、どの程度のインパクトを想定して計画を立てていくべきか、あるいは具体的なインパクトの提供目標を想定した場合にどの程度の活動目標を想定すればよいかを整合的なものとするためです。

実務的には、アクションKPIは明確であるものの推計ロジックにおける前提情報(とある取組に対して、単位当たりどの程度の効用をもたらすかに関するエビデンス)の確保が問題となることもしばしばあるため、そのようなデータアベイラビリティに応じて目標設定の範囲を拡張していくなどの工夫も考えられます。

KPI選定の観点

上記のような効果的なKPI設定のためには、以下のような観点を確認しましょう。
おそらく、全ての要件を満たすような指標・情報は存在しないことが大半のケースだと想定されますが、目的に応じて重視する観点を選択することが重要です。
また、継続的なインパクトマネジメントにおいては、そうした前提自体が変化したことを適切に認識し、場合によっては情報として整理したり開示したりすることも併せて重要となります。

妥当性・適合性

対象となる指標は、評価対象となるインパクトを的確に表現しているか。特に以下観点に留意

  • ストック・フロー(累積で見るか、年単位で見るか)
  • 指標の単位(一人当たり?国全体?特に縮小均衡のケースなど)
  • 比率の利用(基本的には非推奨。仮に設定したとしても、構成要素を別途KPIとすべき)

明瞭性・汎用性

多くの人から理解されやすく直感的にインパクトを把握・理解しやすいか

自社・他社等の開示において実績のあるような一般的な情報か

接続性

対象となる指標は、他の指標から無理のない形で関係性を定義し、換算・統合可能か

公共性・公平性

対象となる指標は、誰でも取得・アクセス可能な情報により構成されているか

また情報そのものに恣意性や偏りがないか

連続性・継続性

対象となる指標は、評価に耐えうる一定のサイクルで取得・整備されているような情報か

今後も継続的に取得・認識可能か

鮮度

対象となる指標は、直近の状況を反映している情報か

正確性・信頼性

対象となる指標は、信頼に足る情報源から取得されうるものか

KPI設定

各領域におけるインパクトの定量評価(=個別事業/取組ごとの貢献の定量化)は個別事業単位のKPI(実績・予算など)を基に、関係性を仮定することにより推計します。単位をそろえることにより横比較や全社での合計、市場全体との比較も可能となります。具体的には、IMPACTLAKEでは、以下3種類のKPIを設定することを推奨しています。

General KPI

特定のインパクト(・アウトカム・アウトプット)における、社会・市場全体の動向を示すようなKPI。個社・個別事業などに紐づくものではなく、公開統計等定量情報を取得・採用するケースが多い。また、基本的には後述のLocal KPI(個社KPIであるAction KPIベースの推計)も、General KPIと比較可能にすることが望ましいため、前述のKPI要件を満たすことが望ましい。(e.g. 医療公費)

Action KPI

個別事業・アクティビティ単位の貢献。アクティビティに対して妥当と思われる企業開示情報やKPIなどを取得・適用(実現ベース・将来予測ベースともに可)。(e.g. MR代替ツールの市場浸透)

KPIは企業ごとの情報開示状況など実際のデータ取得可能性に依存するケースが大半であるため、可能な限り連続性を重視しつつ、妥当性も考慮すべきであり、以下のような優先順位を推奨。また、必要性と目的に応じて推計することも一つの選択肢としてはありうる。(開示していない状況を「インテンショナリティの欠如」として評価しないケースもあるため、case to case)

  • ・実際に効果をもたらした諸元となるデータ(製品稼働時間、ユーザー利用回数など)
  • ・効果をもたらした可能性を推計可能なデータ(製品売上個数、サービス利用者数など)
  • ・間接的に寄与度を推計可能なデータ(製品売上高、ARRなど)
  • ・さらにメッシュの粗いデータ(製品が属するセグメント売上など)

Local KPI

個別事業/取組がどの程度大きなインパクトに結び付いているかを示した指標。Action KPIをベースとして、General KPIと同様の単位(各インパクトのKPI)に推計を行うことで把握。
(e.g. MR代替ツールの市場浸透による、医療公費削減換算額)

Relation(KPIの関係性)

Inputとなるアイテムの単位当たり量変化(増加・減少)がOutputのどの程度の変化につながるかを各種前提をもとに積み上げで試算。Action KPI * Relation = Local KPIの関係である。

impactlake™ 関連機能

KPI管理機能

impactlake™では、上記のようなインパクトマネジメントにおける各種KPIの探索・設定・継続管理が可能です。

KPI管理機能(イメージ)

機能詳細

  • ロジックモデルで構築した各アイテムに対して、モデルと連動する形でKPI(ActionKPI・GeneralKPI)の設定が可能
  • 推計ロジックについては参照する統計なども蓄積可能で、翌年度以降同様のモデルで継続管理可能
  • また、KPIについては企業開示などに加え、公的統計・業界団体統計など逐次最新化されたヒストリカルデータがシステム内に存在し、合致するものに関してはそれらを参照させるだけで試算やデータ更新が完結

機能活用の例

  • 対象となる事業・取組・投資先のインパクトについて定性(経路)と定量(KPI)を統合的に管理する
  • 対象となる事業・取組・投資先のインパクトを表象するKPIを探索・選定する
  • 対象となる事業・取組・投資先の取組や、それらが創出するアウトカム・インパクトに関連したKPIを継続的に連続性のある形で管理する

(その他、本機能に関する不明点等ございましたらサポートまでお問い合わせください。)

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