Step2:インパクトモデルの構築

評価/定量化の枠組み構築

インパクト評価においては、チェックリスト的な評価・定量化ではなく、企業や事業、アクティビティの真の魅力・価値にフォーカスしつつも、より大きな課題設定・社会的意義と紐づくインパクト評価フレーム・KPIを設計・設定する必要があります。

以後、大きく3段階で評価/定量化のための枠組みを構築していきます。

インパクトモデルの構築(イメージ)
  • 評価アイテムの定義・評価の枠組(インパクトモデル)の構築
  • 各アイテムについて、定量化に必要なKPI・パラメータの定義
  • 最後に必要に応じて定義したKPI・パラメータそれぞれの調整・利用可能性の確認・ウェイトの検討

インパクトの質的観点での類型

インパクトモデルを構築していくにあたり、まずは実現しようとしているインパクトがどういったものかを一段掘り下げて理解する必要があります。例えば、医療の領域でも「公費削減」と「寿命延伸」は目指す方向性が異なります(※逆ということではありません)。したがって、事業やアクティビティの特性に鑑みて各領域のインパクトがどういった方向性を目指しているものなのかを、質的観点から大きく以下の4種類に当てはめて理解することを推奨しています。

付加価値の創出

更なるQOL向上、自己実現、社会的地位の向上、等

基礎的価値の維持・向上

衣食住、基本的健康、ライフライン、安心・安全、等

経済合理性の担保

経済性・効率性、消費可能性(Affordability)等

社会的合理性の担保

環境(Environment)、社会(Social)等

各領域における課題が、上記4類型のどれに合致するかは国や地域の文化・社会・経済の発展度合いや特性、パブリックセクターとプライベートセクターの関係性や位置づけなどにも依存することから、一概にどれが正解とは言えません。故に、ここで重要なポイントは「性質の異なるインパクトを別物として確実に認識すること」であり、後述するようなトレードオフや致命的リスクをあらかじめ構造として回避するための整理となります。

また、上記設定の際に、事実上前提とみなすことができるような背景となる要因=コンテクスト(Context)とは別物である点に留意が必要です。コンテクストには以下のような概念が当てはまります。

制度的要因

年金制度、社会保険制度、…

突発的要因

自然災害、疫病、…

構造的要因

少子高齢化、気候変動、…

文化的要因

女性差別、職業差別、…

インパクトの構造的観点での類型

最終的に創出すべきインパクトに関して、構造的観点から大きく3つの主要な類型が存在します。それぞれのパターンに応じて、以下に示すようなインパクトモデルやKPI設定の見直しが必要となります。

1つの確実な目的が存在するもの

  • サブインパクト(アウトカム)が小要素として分解可能
  • 特定の関連要素が所与であるようなものを含む
  • (e.g. エネルギー関連)

->インパクトのブレイクダウンでKPIを検討可能

 

トレードオフな目的が存在するもの

  • 2つ以上の重要な目的が存在
  • 且つ、両立が困難な関係性
  • (e.g. 医療・介護の経済性と基礎的価値の維持)

->どちらかのインパクトにピン止めをして検討が必要

独立した目的が存在するもの

  • 2つ以上の重要な目的が存在
  • 且つ、両立が可能なもの
  • (e.g. 次世代都市におけるエネルギーと交通インフラ)

->独立したインパクトとして検討可能

インパクトパスの類型

各インパクトアイテム(インパクト、アウトカム、アウトプット、アクティビティ)の関係性を定義するものをインパクトパスと呼び、その類型は単純化すると以下の4つが存在します。

基本的パターン

まずはこちらのパターンを中心に検討します。

直接的インパクトの創出

  • 特定のインパクト創出によって、必ず同種のインパクト創出につながる(e.g. GHG削減など)

確立的インパクトの創出

  • 特定のインパクト創出によって、別の複数のインパクト創出につながる(e.g. 家事負担減による時間創出など)

 

付随的パターン

インパクトに対してマイナスな要素として付随的に検討しネガティブチェックすることが推奨されます。

ボトルネックの解消

  • 特定のインパクト創出を阻害する、あるいは効果を無効化するような要因を解消(e.g. 再エネ拡大に資する蓄電池)

ネガティブ・インパクトの解消

  • 特定のインパクト創出による副作用、ネガティブ・インパクトを解消・緩和する(e.g. 医療再編による地域偏在加速等)

モデル設計にあたって留意すべき点

インパクトモデルには様々なパターンが想定されますが、最終的にKPI算出まで念頭に置いた際に取り扱いに困る主なケースを以下に例としてお示しします。

掛け算の因数分解になっているパターン

  • 特定のインパクトが紐づく2つ以上のアウトカムの掛け算となっているパターンにおいては、個別のインパクトを算出する際に互いのパラメータを固定しないといけなくなることから、推計上の扱いに困るため避けることが望ましい

複数の方向性を包含しているパターン

  • 特定のインパクトが2つ以上の方向性(KPIの増減)を保持しているパターンにおいては、当該インパクトを2つ以上のアウトカムに分解し、さらに課題解決の方向性を明示的に示して表現することが望ましい

複数のインパクトにつながってしまうパターン

  • 複数の効用を有するアクティビティ等、どうしても複数インパクトを避けられないケースも存在するが、基本的に1インパクトに収斂させることを念頭に表現することが望ましい

impactlake™ 関連機能

インパクトモデル構築機能

impactlake™では、上記のような観点に即して情報を入力していくことで、半自動的にインパクトモデルを構築し、インパクトマネジメントを迅速に開始することが可能です。

インパクトモデル構築ウィザード(イメージ)

機能詳細

  • 対象となるカテゴリー、地域、インテンション(創出インパクトの方向性)等、impactlakeが区分する5つのステップに回答
  • 回答内容を基に、インパクトモデル(ロジックモデル)のベース案が作成される(Impact~Output)
  • インパクトモデル(ロジックモデル)は、約50の汎用的な想定インパクトの中から選定され、カスタマイズ可能

機能活用の例

  • 対象となる事業・取組・投資先の最終的なインパクトについて探索し、網羅的なインパクト創出経路を導出する
  • 対象となる事業・取組・投資先の創出可能性のある複数のインパクトを管理のために適切に分解する
  • 対象となる事業・取組・投資先が創出しうるインパクトについての新たな視点や洞察を得る

(その他、本機能に関する不明点等ございましたらサポートまでお問い合わせください。)

トップへ戻る