Step2でご紹介したパターンや類型などこ考慮してインパクトモデルを構築していきますが、本Tipsで提案するインパクトモデルは、その構築方法において一定の基準を設けることによってストーリーの可視性に加えて、定量化・経済価値を担保することを前提としています。
インパクトモデル構築の前提
ロジックモデルは領域ごとに分割する
特定のアクティビティに対して、創出されるインパクトが複数領域にまたがるような(例えば地方部への輸送効率が上がると過疎化対策にもなることに加えて、環境負荷も下がるなど)ケースも少なからずあるが、領域ごとにロジックモデルは分けて考慮する。(効果試算、定量化の際に性質の異なるインパクトが存在していると阻害要因になるため)
ロジックモデルは、領域内でさらにインテンションによって分解する
各領域にはいくかの創出インパクトが存在し、特に対象とする地域ごとの特性や課題の所在によって重要視されるインパクトも異なるため分けて構築・管理することが望ましい(例えば、同じ医療領域の課題でも医療公費の課題(最適化・効率化)と公衆衛生対策の課題(拡大・最大化)は同じベクトルでは整理できない)。Step2で述べた通り、大きく「付加価値の創出(例:QoL向上、高度医療、自己実現、社会的地位向上など)」、「基礎的価値の維持(衣食住、健康・公衆衛生、ライフラインなど)」、「持続性の担保(地域経済活性化、医療公費最適化など)」といった類型を推奨している。
ロジックモデルは単一方向的に記述する
本質的には数多くの要因が複雑に影響しあっていくのは間違いないことであるが、波及的効果なども含めた全ての関係性を表現しきることは構築・評価双方の観点からハードルが高いため、実用性を考慮して主要な関係性を体系的に表現することに重点を置くものとする。
モデル上の各アイテム設定
モデル上の各アイテム設定(インパクト/アウトカム/アウトプット/アクティビティ)は以下のように設定するものとします。
インパクト
最終的に実現したいこと・解決したい課題
アウトカム
インパクトの実現のための構成要素として網羅的な形にする
- 定量化が簡単なものであればその内訳(市場構成、コスト構造など)。この際、特に比率が大きなものについては漏れていないこと
- その他であれば一般的な枠組み(バリューチェーン、Patient Journeyなど):特に重要性が高いテーマに関しては漏れていないこと
- そもそも枠組みが変わるようなことがあるようであれば、別立てのアウトカムとして設定
アウトプット
アウトカムにつながるものとしてIWAのフレームワークを今回目的に合わせて拡張したものを適用する(後述)
アクティビティ
企業・事業部などによる取組(直接的にやったこと)
アウトプットにおける推奨される枠組み
ロジックモデルにおけるアウトプットには以下の枠組み(Harvard Business School提唱のImpact Weighted Accountsの拡張版、以下IWA)を推奨しています。なお、拡張している背景としてはIWA自体が単年度のインパクト創出を念頭に構築された枠組みである一方で、ロジックモデルは中長期にわたるものであるため、その点を考慮したものとなります。具体的には、特定の製品・サービスがもたらすアウトプットの中でも一定の時間軸のなかで考慮される価値である「価値の継続期間」「価値実現のスピード」については個別に切り出して認識可能なかたちとしています。
アクセシビリティ(IWA:Access)
課題解決・価値創出に対して、アクセシビリティの向上(旧来ある付加価値の拡散や顕在化)をもたらすもの
質(IWA:Quality)
課題解決・価値創出に対して、質的向上(本質的な付加価値向上)をもたらすもの
選択可能性(IWA:Optionality)
課題解決・価値創出の選択肢を増やすもの、結果として全体の価値向上をもたらすもの
効率性(IWA:Pollutants & Efficiency)
使用・利用過程においてより効果・付加価値・成果の実現に対する効率性が高い・コストが低いもの
持続性(独自に拡張)
使用・利用過程において期待する効果・付加価値・成果がより長く持続性が高いもの
速効性(独自に拡張)
使用・利用過程において期待する効果・付加価値・成果が早期に発現するもの
再利用可能性(IWA:Recyclability)
副次的な効果・付加価値、およびその利用可能性が大きいもの
アクティビティにおける外部性の認識
定性的観点
以下のような観点に鑑みて評価対象となるアクティビティが外部性(アディショナリティ)を持ちうるかを確認します。(詳細はインパクト創出可能性の整理に記載)
- 追加性
- 継続性・持続可能性
- 主体性
- 独自性・優位性
定量的観点
基本的には市場・業界全体平均との差分が正であれば、その差分自体が外部性(アディショナリティ)であるという解釈が可能となります。平均値に関しては一般的に信頼性が高いとされる統計でカバーできるものであれば同指標を採用する方向で問題ありませんが、特にミクロな指標に関してはそうでないものも多く存在します。そのような際は、業界の数字を大量に収集して平均水準を出すというやり方も想定されますが、実務的観点においては現実的ではないため、実際にはインパクト評価を開示(或いはそれに類する業界内優位性検証)しているプレイヤーが開示している情報の中で、最大(インパクトが最大となる数値)のものを実務上でのインパクト評価、インパクト会計上の正の平均値とすることを推奨しています。
impactlake™ 関連機能
インパクトモデル構築機能
impactlake™では、上記のような観点に準拠したインパクトモデルを容易かつ簡潔に構築し、インパクトマネジメントを迅速に開始することが可能です。
機能詳細
- ウィザード、あるいは新規に作成されたモデルに対して、事業・取組の内容をActivityとして紐づけ、事業や企業が持つ本質的な価値創造ストーリーに合致するモデルへとアップデート可能
- 可視性の高いツリー型で直感的・簡易に構築可能
- 別Tipsにてご説明するKPIも同じ枠組みの中で統合的に管理、インパクト定量化まで実施可能
機能活用の例
- 対象となる事業・取組・投資先のインパクト創出ストーリーを、一定の汎用的な枠組みに則って構築する
- インパクト会計などを用いた定量的管理・開示などを念頭に、価値創出経路(定性)と創出価値(定量)を統合的に管理する
- 構築したモデルを継続的に活用し、定期的なインパクトマネジメントの負荷を最小限にする(より高度な思考や戦略立案などにリソースを配分する)
(その他、本機能に関する不明点等ございましたらサポートまでお問い合わせください。)